連休を利用して、新潟に帰省してきた。

 とはいえ、私自身は新潟に住んだことがない。だから、私の「帰省」は「帰郷」ではないのである。私にとっての「帰省」は単に「両親に会う」という意味でしかないのだ。
 人はよく、「帰省する」ことを「田舎に帰る」などと言ったりするが、新潟は私の「田舎」ではないし、故郷でもない。「帰る」という字を使うのも、正直、違和感を覚える。

 両親が新潟に移ってしばらくは、「帰省」は退屈な行事であった。だってさ、両親と7つ下の弟以外、新潟に住んでいる知り合いはいないんだぜ? 遊び相手がひとりもいないんだ。
 することがなくて退屈のあまり、ひとりで日本海に泳ぎに行ったこともあった。私の実家は、海が近いのである。
 日本海にプカプカ浮かびながら、水平線にかすむ佐渡を眺めたり、沖のテトラポットまで意味なく遠泳したり。のどかではあったけれど、あれも退屈だったなあ。


 最近は、そういう「退屈さ」は感じなくなっている。やはり、子どもがいるというのは大きいのだ。

 今回の新潟行でも、両親や餓鬼どもと一緒に、あちこち出かけた。

 越後平野に点在するチューリップ畑は、本当に美しかった。なぜもっと宣伝しないのだろう。チューリップの農園なんて、そうそう見られるもんじゃないのに。
 水族館のマリンピア日本海にも行った。子どもが魚を見るのが好きなので、新潟に行くたびに行ってるような気がするが、サンシャイン水族館の100倍ぐらい楽しい。新潟を訪れる機会があれば是非、とお勧めしたいスポットである。魚の質と量がちがう。
 父親の案内で、新潟県立自然科学館にも行ってきた。新潟の公共施設――道路・公園・文化施設など――の立派さは、特筆に値するが、ここも例外ではない。それもこれも田中角栄のおかげである(角栄と新潟については、言いたいことがたくさんあるけど、長くなるからまたの機会にしよう)。

tulip
(越後平野のチューリップ畑)

 前述の日本海にも、二度にわたって出かけた。一度は貝殻拾いと称して餓鬼どもと砂浜を歩き、もう一度は弟の企画で家族バーベキューをやった。
 ウチは父親が下戸なので、酒を日常的に呑むという習慣がない。クルマ二台で出かけてきたせいもあって、ビールもない、完全にノンアルコールのちょっと変わったバーベキューだった。でも、楽しかったし、うまかった。弟の仕込みはみごとだったと思う。子どもたちは海遊びに熱中していて、ロクに料理を食ってなかったけどさ。

sea
(日本海の荒波に挑むウチの餓鬼)


 弟の店にも、はじめて行った。
 私の弟は、新潟で若者向け居酒屋(ほかに表現はないものか)の店長をやってるのである。
 店の名は「JAM」。ロック・ファンたる私にはうれしい店名だ。現在2店舗あって、近々3店目を出店する予定だと聞いた(ブログはこちら)。

 弟は以前、東京にもある大手の電機量販店で働いていた。営業成績も良かったらしく、本社から表彰されたとかいう話も聞いた。
 だが、思うところあったのだろう、量販店は退いて、居酒屋JAMの立ち上げメンバーとなったのである。
 牛後であるよりも、鶏頭であれとは言うけれど、なかなかできるこっちゃない。立派なもんだと思う。

 もっとも、事業をはじめるのは誰にでもできる。大切なのは、それをいかに持続させるかなのだ。

 居酒屋JAMは、とても流行っているようだった。
 私には、それが何よりうれしかった。

 近くに工業団地があるそうで、ロケーションもいいのだろう。料理も手作り感があって意外にイケるし、値段もお手頃だ。常連客も多そうだった。
 私と家族が案内されたのは無国籍な異国情緒漂う個室だったけど、だらだらといつまでも呑んでいたい気持ちにさせる部屋だった。聞けば、個室のテーブルは弟の制作になるものだという。道理で釘の頭が不揃いなわけだ。そこがかえって味になっているのも泣かせる。

 忙しく動いている弟を見て、ウチの長男坊が「おじちゃん、カッコいい!」と言ったのが印象的だった。子どもは正直なもんだからね。働く男の姿をしてたってことだろう。自信を持っていいぜ、和哉君。

 というわけで、みなさん、新潟にお越しの際は、是非一度「居酒屋JAM」を訪ねてやってください。ひときわ背が高くて、気のいいナイスな店長があなたに最高の時間をお約束します。



居酒屋JAM赤道店
http://www.niigata-cci.or.jp/present/detail.asp?preCode=123
ブログ「JAMな人々」
http://blog.livedoor.jp/jamonestar/
(なんと、弟がウチの餓鬼の写真をアップしている。我が子もついにネットデビューだ)